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今回は、いつものIT関連の新刊書でなく、古い本を取上げたい。きっかけは、ITアナリストでアイ・ティ・アール社長の内山悟志氏が選ぶ「この夏読みたいビジネスを変える1冊」にこの本が取上げられたことである。夏休み前によくある企画だが、今回は、ウェブサイトに出されていた。そこで、ずいぶん前に読んだ本を改めて読み直してみて、この本の「すごさ」を再確認した。
同書は、1961年に初版が発行された(原著の初版は1940年)半世紀の歴史を持つ不朽の名著とされ、もはや「古典」といってもよいものだ。筆者が持っているのは1988年の再版の初版本であるが、書き込みや傍線だらけで、相当感動して読んだことが伺われる。
わずか100ページほどの薄い小さな本だが、「アイデアとは何か」「アイデアはどう手に入れるか」のエッセンスが詰まっている。そのための出発点はわずか2つの簡単な原理だ。
著者は広告業界に身を置いていたため、広告の効果を生み出すことに腐心していた。ここでの結論は、「広告はスペースを売るのではなく、“アイデア”を売ること」。そこで、アイデアを作り出すにはどうするかという考察が始まったと言う。結論は、「アイデアの作成は一定の明確な過程(プロセス)である」ということである。その技術を修練することが、これを使いこなす秘訣であるとする。
アイデア作成の基礎となる一般的原理について大切なことが二つあるという。
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原理1: |
アイデアは既存の要素の組み合わせ以外の何ものでもない |
| 原理2: |
既存の要素を新しい組み合わせに導く才能は、事物の関連性を見つけ出す才能に依存する |
アイデアは、製品と消費者に関する「特殊知識」と人生とこの世の様々な出来事についての「一般的知識」との新しい組み合わせから生まれる。まず資料を集めることがアイデア作成の第一歩である。そのためには、「カード索引法」が有益とする。3インチ×5インチの罫線の入ったカードを用意し、集めた知識を項目ごとにカードに記入、分類し1つのファイルボックスに保管する。一般的資料を蓄えるにはスクラップ・ブックとかファイルを使う。
原理2において、いま探しているのは「関係」であり、まず仮の、あるいは部分的なアイデアを書き留めるにも3インチ×5インチのカードが役に立つ。
これらのアイデア創出法を見て思い出すのは、かつて一世を風靡した川喜田二郎氏によるKJ法(「発想法」「続・発想法」)や梅棹忠夫氏の京大式カード(「知的生産の技術」)だ。このことは、本書の解説を書いた地球物理学の世界的権威者、竹内均氏も指摘している(詳しくは後述)。
最近では、この分野にもITによるツールが多数出廻っている。パソコンが自由に使える時代になって、ワープロソフトだけでも上手に使えば発想を助ける道具になる。
ヤングは、「アイデアのつくり方」を5つの段階に分けている。すなわち、
- データ(資料)集め
- データの咀嚼(そしゃく)
- データの組み合わせ(孵化(ふか))
- ユーレカ(発見した!)の瞬間
- アイデアのチェック
である。
このうち3および4は「無意識的活動」、1および2と5は「意識的活動」の時期と呼んだ。この「孵化」の部分に特徴がある。ここでいったん問題を放り出し、心の外に追い出してしまうのである。そして、ふとした瞬間にユーレカが訪れるという。重要なのは、インスピレーションが働く3と4に前後する意識的活動である。ここは凡人である我々でもコントロール可能な時期だからである。
ここで記述した諸段階を通過しないで<頭のてっぺん>からいきなりアイデアを生み出す(いわゆる「ひらめき」の)天才を見たことがあるだろう。しかし、このケースは一般的にあてはまらない。あたかも「ユーレカ!手に入れた!」と気がつくことはあっても、実際は集めた多くの資料とそれを関係づける長い修練の結果である場合が多いのだ。
ヤングは最後に、言葉の重要性に触れている。我々は言葉がそれ自体アイデアであることを忘れ勝ちであるとし、言語意味論(セマンティックス)にもとづく価値の高いシンボルとしての言葉のアイデアが生み出されることを指摘する。当時としては極めて先進的な思想であることに驚かされる。
最後に竹内均氏の解説が本文とは別に25ページほど書かれているが、これが抜群に面白い。まず、広告業界と自然科学といった全く違った分野での「アイデアのつくり方」が全く一致していると言うことに驚いたと言う。
この世界で大きい飛躍の可能性を指摘したのは川喜田二郎氏であり、その考えは古典的と呼んでよい「発想法」「続・発想法」にまとめられている。凡人が天才に迫る一つの方法がKJ法に代表されるカードを使うデータの組み合わせであり、それを発明したのが日本人であることの意味合いを竹内氏は指摘する。
ここまでくると分かるように、ヤングが「無意識的活動」とした上記3のプロセスが、実は「意識的活動」の時期に含まれるのである。「今までインスピレーションは天才にのみ許されることとされたが、それを今や凡人にまで及びえることとしたと言ってよい」と竹内氏は言う。
また、竹内氏は、これまでに(1988年時点で)280冊の本を書いた。その「私なりの方法」を述べているが、この「アイデアのつくり方」での方法と原理的に変わらないのだ。その方法とは、一日に「たった」10枚の原稿を書くことを、「たった」20数年続ければ、280冊の本を書くのは「たやすい」という。ある本を書くには、話題を100集めればよい。1冊あたり原稿用紙300枚として、1話題につき原稿用紙3枚にまとめた素材(断片)を作り続ければすむという。
この本をWebで紹介した内山氏も、原稿や本を書く際にこの方法を使っており、これを階層的に組み合わせる方法を、ソフト開発のモジュール化プログラミングに因んで「モジュール化執筆法」と呼んでいる。
本書から、アイデアをめぐって竹内氏、内山氏へと話が移行してきたが、「アイデアをどう生み出すか」に悩んでいるビジネスマンはこの世に大変多いと思われる。アイデアをつくり出す普遍的な原理とそれを実践するハウツウまで書かれた本書は、現在でもその価値は全く衰えていない。Web書店から入手可能なので、多くの読者に一読をおすすめしたい。
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参考資料: |
日経BP社 nikkeibp.jpサイト bpspecial書評“「アイデアのつくり方」ジェームス・W・ヤング著”(内山悟志)2004.8.10 |
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