ITケイパビリティ
 ◆ 紹介
ITケイパビリティ 表紙
タイトル ITケイパビリティ
著者 NTTデータ・NTTデータ経営研究所 執筆/国領 二郎 監修
発行 日経BP企画
発行日 2004年9月
販売価格 1,800円
 ◆ 内容紹介
<コメント>
 

IT支出が年々増加するなかで、IT投資効果が本当に上がっているのか。調査によれば、IT投資効果を十分実感できている日本の企業はわずか5%という。なぜ、効果が上がらないのか。それは、ITの問題でなく、ITを活用する組織全体の企業能力が問題ではないのか。日本企業がいかにここを真剣に考えていないかが、冒頭に紹介される調査結果から読み取れる。これが「ITケイパビリティ」というタイトルに込めた本書の主張である。

「ITケイパビリティ」とは、本書では「組織の持つIT活用能力」と捉えている。ITの導入効果が上がらないのはなぜか、状況を打開するために何をどうすればよいか、に焦点を当てたのが本書である。企業16社のCIO級メンバーらによる「IT活用研究会」の活動結果がベースになっている。本書をまとめることになった動機は、「問題を構造化し解決しようという発想も共有され、トップや利用部門とのコミュニケーションの大切さも確認された。議論を重ねるうちに、この会をただ内輪で終わらせることはもったいない」ということで本として刊行することになった。

ERP研究推進フォーラムが毎年実施しているユーザーアンケート調査でもIT投資効果指標を整備している企業の割合は、1ケタ台である。また使っている指標も「業務の効率化」が中心で、「顧客の獲得」や「サービス品質の向上」など付加価値の部分には生かせていない。

本書では、ITケイパビリティを「IT活用ビジョン構築能力」、「IT活用コミュニケーション能力」、「プロセスデザイン能力」、「IT投資適正化能力」、「チェンジリーダー開発能力」の5つの能力に分解している。それぞれについて、読者が自社のレベルを把握するための自己診断表や、弱点を補強するための「処方箋」も用意している。これを使って自己診断を試みてみるのもよいだろう。

また、IT活用効果の差を生む「使いこなし」の要因として、16の取組み要素に注目している。これが「IT活用環境整備度の評価項目(組織能力)」である。ITをうまく活用できないということは、この要素のどこかに不備があることになる。

最近、IT・ROI(Return on Investment:投資利益率)への関心が高まっているが、これは効果の現状把握や、コストを抑える役割は果たすが、投資効果の最大化のためには他の4つの能力向上が必要であるとする。

ITケイパビリティの得点が低い原因を、部門ごとに落し込み、それぞれに病名を付けた。経営層に問題が多い場合を「経営層 IT健忘症企業」、IT部門については「IT部門 オタク企業」、ユーザ部門は「ユーザ部門 他力本願型企業」だ。これら症例ごとに、「勝ち残るための処方箋」が詳しく述べられている。

めざす目標は、「IT投資効果を高める」ことだが、難しいのは「行ったIT投資の効果を計測すること」だ。それに対して、この本は「IT投資の活用能力の高さ」を計測する手法を提案している。システムの活用は、それをデザインする人の能力にかかっており、人の能力開発こそが重要である。そんな本書のメッセージが伝わってくる。

ITケイパビリティは、組織を構成する構成員個人の能力に加えて、組織の体制、トップや組織間のコミュニケーションといった組織間の関係など様々な要素が絡んでおり、向上させるのも簡単でない。これからも息の長いテーマとして企業が取組むべきであろう。

前号メールマガジンで取上げた「誰も語らなかったIT 9つの秘密」と本の狙いはほぼ同じだが、本書は違ったアプローチで取上げている。より実践的な解決手法の提案が含まれている本だ。合わせて読み比べてみることも面白いだろう。


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