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著者の工藤氏の現職はNECソフトの執行役員常務だが、前職のNEC時代を通して、海外特に米国と中国における豊富なビジネス体験を持つ。この経験を通して、米中日間のビジネス慣行の違いやサラリーマンの生き方、行動パタン、価値観の相違などについて多くの事例を駆使して著書の中で展開する。
日本企業は、優れた人材、企業への高いロイヤリティー、高度なチームプレーなどの優れた資質に恵まれている。この特徴は、アメリカ人、中国人には見られない日本人の誇るべき特質と著者は言うが、最近の劇的な環境変化に対応できていないのではないか。日本が「再び世界で輝きを取り戻して欲しい」。そのためにも、ここ数年で「何を得、何を失ったのか、これから、何を得ようとし、失おうとしているか」を冷静に振り返る時期にあるというのが、著者の本書を著す動機である。
そこには、以前から米国や中国に対して我々が持っているステレオタイプな物の見方を見事に覆す部分もあれば、「やっぱりなあ」と納得しながら読める部分も含まれる。
例えば、日本のIT開発の世界で、半ば常識化している「人月」単価契約だが、これ自体は今後改めるべき、即ち、かけた工数ではなく、成果に対する適正な対価をもって評価する「欧米型」のシステム開発契約にするのが方向として正しいという認識がある。
ところが、米国では(特にコンサルタントにおいて)、工数契約が主流になっているというのだ。アメリカのサービス会社の単金は、日本に比べて高い料金設定になっている。例えば上級SEで500万円/月にもなるという。そのせいもあって、アメリカでは、パッケージ指向の開発が主体になる。また、ユーザーが賢くて、コンサルタントを要領よく短期間で有効活用してコストの高騰を防いでいるという。
背景として、サービスに価値を認める社会環境があるという。また、工数をかけた成果(パフォーマンス)についての厳しい評価が当然ながらついてまわる点が日本とは大きく異なっている。
また、日本には、ソフトウェア、ハードウェア、構築サービス、アウトソーシングなど全てまとめて面倒みるシステム・インテグレーターという業種があるが、米国にはそういう業態がないという。米国で、この役割を果たしているのはユーザー自身だという重要な指摘がある。このことが、ITシーンをめぐる日米の構造的な違いを生む。この結果として、米国発の「先進的」な情報が、日本では当てはまらないケースがしばしば起こる。(当フォーラムで、米国調査を継続的に行っている理由も実にこの点にあるのだ。)
中国に関しては、システムインテグレーションのようなサービス事業は、産業としては未成熟な状況だ。そもそも無形のサービスに対して対価を払うという意識が希薄だ。この点は、日本でも同じ状況の解消に10〜20年かかったというが、中国において、アメリカ並みのサービス価値を認めるようになるには、日本人の時間軸では予測できないほど長時間かかるだろうと著者は指摘する。
その他、米国や中国でのビジネス構造やサラリーマン・ウーマンの生き方、価値観、行動パタンなどの日本との比較や考察、それにより引き起こされる様々なエピソードなどが豊富に語られる。一種の文化論として読んでも大変に面白い。
また、米国のベンチャーキャピタリスト氏との心温まる交流の軌跡が紹介される。同氏が、この本の推薦文を寄せているのを見ても、その交わりの深さが納得できる。外国人とここまでのつきあいができるのは、著者の人柄によるところが大であろう。
「飛び出せ日本人」というタイトルには、これからの日本人は、米国や中国などを相手にしたグローバルビジネスへの雄飛、個々人の企業からの飛翔、更に自分自身への飛躍の願いが込められている。著者の豊富な経験を日本のビジネスマン層へのサジェッション、特にIT産業に関わる人々に対する指針として示すことで、「日本人よ、元気になれ」という著者のメッセージが伝わってくる。その意図は本のなかで十分果たされているものと思う。
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