畑村式「わかる」技術
 ◆ 紹介
「わかる」技術 表紙
タイトル 畑村式「わかる」技術
著者 畑村 洋太郎
発行 講談社
発行日 2005年10月
販売価格 700円
 ◆ 内容紹介
<コメント>
 

著者の畑村氏は「失敗学」の先覚者として著名だが、失敗学は、創造の過程で、失敗の扱いがいかに大切かに気づいたから生まれたという。ところが、さらに考えを進めると、創造であれ、失敗であれ、それをやる人間の頭の中の動きを知る必要があり、「わかる」というテーマにたどり着いたという。

創造や失敗を考えるとき、まず事象を「しっかりと理解する」こと、すなわち、まず「わかる」仕組みをきちんと知る必要がある。これが本書を著す動機となっている。

第1章では、「わかる」とは何かについて、様々な角度から説明する。「本当にわかること」がなぜ創造に結びつくかについても述べる。第2章では、「わかる」ために日々の活動でどうすればよいかについて説明する。第3章では、「わかる」ということを具体的なノウハウで紹介する。言葉と絵の組み合わせが人の考えの伝達に非常に有効であること、本当に「わかる」ためには、現地・現人・現物の「三現」を実践する必要があることなどを指摘する。

事象の理解のためには、自分なりの頭にある「テンプレート」との比較を行う。そして一致しているときに、「わかる」と感じる。しかし、テンプレートの一致にも、いくつかのパターンがあるという。すなわち、「要素の一致」「構造の一致」「新しいテンプレートの構築」の3つだ。よく「わかる」ためには、いかに多数のテンプレート(すなわち、要素と構造とその組み合わせ)を頭のなかに持つかということと、これらを構成して、「新しいテンプレートを構成する」能力を磨くことが必要になる。

そのためには、暗記が必要不可欠であること、数と親しむこと、わからないけれど作り出す、つまりテンプレートを作ることが重要だ。さらにそれを自在に使うための方法が説明される。これは、いわゆる「仮説検証」という思考プロセスだ。最終的に、課題を自分で設定し、問題と自分で組み立てたテンプレートのマッチングを行う。このような試行錯誤を繰り返すことが、創造的な仕事をする第一歩だ。

このように、「わかる」を進化させることは、「考える」という作業につながる。このことが「わかる」が創造につながるひとつの根拠となる。

著者は、現在、産業や技術がひとつの壁に当たっているという事実を指摘する。東証のシステム障害や鉄道事故にみられる、過去の常識では考えられない初歩的なミスや、チェック漏れなどの信じられない現象がその証拠だ。従来の成功方程式が通用しなくなったのだ。この壁を突破する有効な方法が、「わかる」ことを真正面から取り上げることだとして、現在の産業社会で、本当に「わかる」ことの重要性を結論付けている。

普段は、あまり突きつめては考えてない、「わかる」ことの意味合いと、その技術を向上するノウハウを取り上げたユニークな一書としてお勧めしたい。


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