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本書はネット世界で何が起きているかに焦点をあてる。
情報技術(IT)ではなく「情報そのもの」に関する「革命的変化」が今起ころうとしていることを何とか伝えたいという意図で書かれている。しかし、著者自身が述べているように、ネットの世界に「住む人」と「使ったこともない人」との間の溝は広がる一方だという。ネット世界の進化を支える3大潮流と3大法則があるという。
次の10年への3大潮流 (1)インターネット (2)チープ革命 (3)オープンソース
インターネットは言わずもがなだが、「チープ革命」は「ムーアの法則」に支配されていることが今後も長く続くだろうと言う。「オープンソース」は、Linuxに代表される、世界中の不特定多数の開発者が寄ってたかって問題解決をしてしまう現象で、完全に既存のソフト開発の常識を覆してしまった。
ネット世界の3大法則 (1)全体を俯瞰する視点からの世界理解 (2)ネット上の人間の分身がカネを稼ぐ経済圏 (3)(≒無限大)×(≒ゼロ)=Something
(3)は1円以下、ないし数秒といった、放っておけば消えてしまうような価値を「不特定多数無限大」集めれば「いささかの価値」(Something)になるという考え方。この「不特定多数無限大」というキーワードが、本書を貫く背骨となっている。
「3大潮流」の相乗効果と「3大法則」というルールで発展を遂げ始めたネット世界のあり様は、ブログなど情報発信を容易にする手段が普及してWebの世界が変わってきた、いわゆる「Web2.0」と重なる。
技術革新の主役は“グーグル“。「グーグルって検索エンジンを無償で提供している会社でしょ」というのは一面正しいが、本質は検索エンジンを手始めに「知の世界の秩序」の再編成を目論むということだ。グーグルの営みはインターネット登場以来の懸案だった「玉石混交問題」の解決につながるものなのだ。石のなかから玉をより分ける技術に磨きをかける。そのために、自前の技術をとことん追求する極めて技術指向の会社だという。
著者は、ネットの「あちら側」と「こちら側」の違いというかたちで、Webの技術進化の大きな流れを解説する。あちら側とはGoogle、Amazon、Yahoo、楽天などがネット上で圧倒的な資金力と知の集積により、高品質なサービスを展開する世界。こちら側とは、インターネットの利用者、つまり我々一人一人に密着したフィジカルな世界だ。企業内での閉じた情報システムなどの環境はその典型だ。
著者の言う「あちら側」のアンチテーゼとしての「こちら側」は、既存のエスタブリッシュ企業の情報システムが代表的な例だが、Microsoftも含まれてしまっている。「あちら」と「こちら」を分けるキーは、主に技術と事業構造だが、もう一つの軸が「不特定多数無限大」への信頼性ということだ。さらに、「オープン性」と「囲い込み」という軸での見方もされている。
筆者に言わせれば、依然として高いコストを投じて、閉じたシステムを開発し続けている既存のリアル大企業は、「こちら」よりもさらに「うしろ」側にいるということだろう。「あちら」側と「うしろ」側とのギャップは限りなく大きいと思う。
著者は早くからブログで情報発信しているブロガーの草分けだが、これに関連して二つのエピソードを紹介する。
その一つは、昨年9月の総選挙での小泉圧勝を解散時に予想できたという話だ。解散時に政界筋やマスコミで小泉圧勝を予想したものは殆どなかったと思うが、日本のブログ空間では小泉支持が圧倒的多数であることに驚いたという。これがリアル世界でミクロに大衆層に影響し、大きなうねりになることは容易に想像できたというのだ。
もう一つは、様々な試行錯誤の末、ブログこそが限りなく理想に近い「知的生産性の道具」と感じ始めているという。道具と自分が一体になって、最も「しっくりする」ということだ。
短い紹介で、広範な内容に裏付けされたこの本の本質的なメッセージを伝えることはきわめて困難だ。もちろん読み手のバックグランドによって、その理解の深さ(特にその技術的な部分の)は異なるであろうが、将来ここで書かれている「ウェブの進化」の流れは、企業のIT環境や個人の生活にも大きなインパクトを与えるものだろう。
著者は「あとがき」で、従来の日本社会で優れた仕事をしてきた人に、ウェブ進化を過去のアナロジーでなく、「まるごと」理解してほしいと期待する。多少なりともITにかかわる人なら是非目を通してほしい一冊と言える。
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