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著者の松原氏は、当ERP研究推進フォーラムの活動にアドバイザーとして的確な助言をいただくなどご協力いただいている。また、本書は松原氏と当フォーラムの森研究員が内部統制をテーマとするセミナー・研修を共同企画してきたことがきっかけで生まれたという経緯もあり今回紹介することとした。
2006/11/08に久しく待たれていた「実施基準(草案)」が金融庁から公表された。その後、11月21日に「公開草案」として公開されている(金融庁『財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準(公開草案)』)。今後パブリック・コメントを受け付け、今年末から年明けに正式な実施基準として公開される見込みだ。
今回の草案は、IT関係者や一般人などにはわかりにくいもので会計、監査の専門家向けの内容と言える。かつ実務指針としての記述の詳細さに欠けるため、個々の経営者や監査人の判断に負う部分が多く、グレーゾーンを多く残してしまっているといった評価もあるようだ。
すなわち、企業は今後自ら考えて自社の内部統制(当面はSOX法対応)の方針や実施計画を立案せざるを得ない状況にある。実施基準はともかく、本書はこれらを補完し理解を深めると同時に、より実践的なヒントを得るために大変参考になる。
書店に内部統制や日本版SOX法をうたった類書が山積みだが、それと比較して本書の特徴を上げるならば、まず内容が極めて具体的、実践的であることだ。企業が当面取り組むべき課題がホップ・ステップ・ジャンプと3段階で示されている。
初めに(ホップ)、先進国米国での動きが、日本にどのような流れを生んだかの解説。ここで、法制度の背景にあるものや先例である米国基準などを理解できる。
次に(ステップ)、日本版SOX法はなぜ「日本版」なのか、また遵守の概要から実践にいたる「ツボ」の説明。最後に(ジャンプ)、「ビヨンドSOX法」として、単なる法律遵守を超えて、ビジネス効果を最大化するための企業としての取組みを示唆する。
この中でも、これから取り組む企業にとって最も役に立つのは、第5章「日本版SOX法の外堀を埋める〜5W1H」、第6章「日本版SOX法の内堀を埋める〜ツボ」だろう。極めて、実践的かつ具体的な内容だ。
政府の「実施基準(公開草案)」は、経営者向けの「トップダウン・アプローチ」(重要性の観点から評価範囲を絞り込んでいく手法、本書108ページ)の指針にはなりうるが、実務指針としては限界がある。それに代わる実行計画立案のガイドとして有効だろう。
これからSOX法遵守プロジェクトをスタートする企業にとってタイムリーに実践レベルの情報を取得でき、今後の対応への指針が得られるだろう。
次に、表現形式(編集)が理解しやすく、読みやすくなっていることも特長と言える。重要ポイントは太字(ゴシック)で示され、その部分だけ読んでも一応の理解が得られるようになっている。また、見開きの右ページが本文、左ページが図表や関連資料という編集になっており、かつ資料の表の部分の説明も丁寧になされている。つまり資料集にもなり得るのだ。
その内容はかなり専門的な部分もあり、そういう観点で日米においてリリースされた各種の資料や法律の内容間の関連などをチェックする目的にも十分耐えられる。言い換えれば、詳しく知りたい場合は、情報密度の濃い資料で確認でき、経験の少ない読者でもその目的に応じてそれなりの読み方を選ぶことができるわけだ。
松原氏は、わが国でBSC(バランス・スコアカード)の推進において第一人者といえるが、本書でも、SOX対応の枠組みや各種資料の説明にBSCのフレームワーク「戦略マップ」を駆使している。得意分野の応用ということであるが、この使い方が巧みで理解を助ける効果を生んでいる。
日本版SOX法への対応は、まさにこれからが本番だ。経験のない中堅・中小企業などでは、相談したくても専門知識を持ったコンサルタントが払底しているとも聞く。 そうした中で、まことに絶好のタイミングで本書が発刊されたことになる。
現状では最低限の法遵守だけを目的とした対応しか考えない企業もかなりの割合で存在するようだ。法遵守はもちろん必要だが、この機会に自社業務を内部統制の観点で見直し、将来の企業価値を高める発想で取り組んで欲しいものだ。
そうした企業にとって、効率と効果を両立した日本版SOX法への取組みを確立するために、本書に示されたノウハウがヒントとして大いに役立つと思う。是非一読して欲しい一書と言える。
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