いざ「転職したい!」と思ったとしてもどのように転職活動を行えばよいのかわからない薬剤師の方は多いでしょう。

転職を成功させるための活動方法や注意点をプロセスに沿って説明します。

転職活動に入る前に行うこと

転職活動に入る前に、まず考えなければいけないことがあります。
転職を成功させるためには必須です。

本当に転職すべきなのか?を考える

転職は現職に不満をもって行うことが多いですが、その理由が本当に転職理由に値する理由なのかどうかを自問自答してください。

単に「逃げ」だと、転職してもいずれ同様の不満を抱く可能性が高いです。感じている不満に対する改善は難しいのか?努力すれば克服可能ではないのか?よく考えましょう。

自身の希望を明確にする

転職の希望を明確にすることはとても大切です。薬剤師転職サイトなどを見ればわかりますが、薬剤師の求人案件は非常に多いので、希望が明確でないとどの案件に応募するのか迷います。また、複数案件の選考が進んで結論を出さなければいけない時に迷ってしまう可能性が高くなります。

転職先に希望しているのは職場環境(勤務地、時間、設備、制度、人間関係など)なのか、やりがいなのか、待遇なのかを明確にしてください。優先順位をつけることも大切です。

転職活動にどの程度の時間がかかるかを想定する

転職したいと考えても、すぐに希望の案件が見つからないかもしれませんし、選考には複数のプロセスが必要です。さらに、退職するにもある程度の時間がかかります。明確なスケジュールを立てる必要はありませんが、転職活動を開始してから転職するまでどのぐらいの期間が必要なのか想定すれば余裕を持った活動ができます。

転職活動① 情報収集

準備が完了すれば転職活動を開始します。まずは情報収集です。転職を成功させるために情報収集が非常に大切なことはご理解いただけるのではないでしょうか。情報収集の目的と具体的な方法を紹介します。

転職のトレンド、マーケットの状況を把握する

売り手市場の薬剤師とはいえ時期によっても、また年によっても案件の数は異なるし傾向も変わります。希望に合致している案件が多いかもしれませんし逆に少ないかもしれません。転職市場の状況によってどのように応募するか、活動を進めるかを考慮して活動を行わなければいけません。

求人サイトや転職エージェントを利用して情報収集を行い、状況を把握してください。

転職エージェントへ登録する

転職エージェントは転職成功のための有効なツールです。必ず登録してください。案件情報だけではなく、転職市場の状況やトレンドといった情報も収集ができますし、選考が進めばコンサルタントのフォローやサポートを受けることもできます。この際、複数の転職エージェントに登録することをおすすめします。

情報源は多い方が良いですし、自分に合うエージェントを選択することができるからです。

転職活動② 応募~選考

情報収集を行い、希望の案件が見つかればいよいよ応募し、選考に進みます。応募並びに選考に臨む際の流れと注意点です。

希望に合致した案件にしか応募しない

時期にもよりますが、薬剤師は売り手市場ですので求人案件は多く、応募可能な案件が多数あるでしょう。機会を喪失しないために可能性のある案件には全て応募したいと考える方もいるかもしれませんが、希望に合致した案件にしか応募しないでください。

多数の案件の選考を進めても最終的な結論を出すことが難しくなりますし、希望以外の職場に転職すると後悔することがあるからです。

複数の案件に同時に応募する

希望の案件が複数見つかれば、同タイミングで応募してください。転職活動は一件ずつ応募しなければいけないというルールはありません。選考で複数案件の比較ができれば、結論を出す時に納得した判断を下すことが出来るはずです。

面接対策はしっかりと行う

選考の対策、特に面接対策はしっかりと行ってください。面接での評価ポイントは「薬剤師としての実力」だけではなく社会人としてのマナーやコミュニケーションを持っているかどうかも重視します。面接前に、想定質問に対する回答を準備するだけでも自信を持って臨むことができます。

面接の想定質問例

  • 「転職理由(納得のいく理由なのか)」
  • 「志望動機(なぜ数ある職場の中で応募したのか)」
  • 「業務上の強み」「苦手なこと」
  • 「現在の年収と希望の年収(現職の年収と希望の年収額とに大きな差があってはいけません。現状以上の金額を希望する際には根拠を説明する必要があります。)」
  • 「なにか質問はありますか?(ありません、と答えるのはNGですし、待遇や休日、勤務時間といった待遇面ばかり質問するのもネガティブな印象を与えます)」

転職活動③ 内定~意思決定

選考が合格すれば内定となります。内定から意思決定までの流れとポイントを説明します。

不明点は曖昧にしない、交渉はしっかりと行う

選考が終了し前向きな結果になることがわかれば、感じている懸念点や疑問点はきちんと確認をしましょう。

  • 仕事内容や業務範囲
  • 手当の有無
  • 休日や拘束時間

など、転職後後悔したくなければ解消しなければいけない懸念点があるはずです。

条件面は書面で確認をする

上記とも連動しますが、業務内容や雇用条件、待遇などは書面で確認してください。

口頭のみの確認だと転職後に仕事内容や給与面で「話が違う」ということが発生した場合「言った、言わない」の水掛け論になることが多いからです。この場合、勤務している側の主張が通ることはまずありません。

このような事態を避けるためにも、また冷静な判断をするためにも書面での確認は必要です。

職場見学を行う

調剤薬局や病院に転職する場合、職場見学を申し出てください。どのような職場なのか、どのような人が働いていてどのような施設や設備があるのか、などを把握できれば安心して働くことができます。

薬局見学に行く際の服装については、マナーとして私服ではなくリクルートスーツを着用するようにしましょう。転職する側としては職場の雰囲気や設備をチェックする目的がありますが、受け入れる側としてもどんな人が転職してくるのかを確認する機会となります。良いイメージを残すことでスムーズに新しい環境になじむことが出来るでしょう。

転職活動④ 退職交渉~退職

転職の決断をすれば、現職を退職しなければいけません。退職までの流れを説明します。

「立つ鳥跡を濁さず」を忘れずに

転職先が決まれば一日でも早く退職したいという気持ちは理解できます。しかしお世話になった職場や同僚に迷惑をかけないようにしなければいけません。職場の状況を考慮しながら無理のないスケジュールで引き継ぎを行い退職してください。

退職の意は直属の上司に伝え、話し合って退職日を決定します。退職の意を表明すると必ず引き止めに合うことになるでしょう。強い意志で退職することを宣言してください。

次の職場への準備をする

退職してから次の職場に入職するまでの期間(もしくは有給休暇の消化中など)、骨休めをしたいというお考えをお持ちの方もいるでしょう。英気を養っていただくことは全く問題ありませんが、次の職場で一日も早く活躍できるように必要な知識を身に付ける時間も作ってください。

転職活動⑤ 勤務開始

いよいよ新天地での勤務開始です。たとえ経験豊富な方でも新しい職場では新人です。謙虚な気持ちを持ち、前向きな気持ちで業務に取り組んでください。

物事の進め方や仕事内容が以前の職場とは異なる場合、自分が楽な方法や慣れている方法で仕事を進めたくなるかもしれません。自分が正しいと思える場合でも周りの意見をよく聞いてアドバイスを求めることで、新しい職場でうまくやっていくことができます。

薬剤師の転職理由

転職に関する情報やノウハウは氾濫しています。その中で信頼性の高い体験談は転職活動に関するブログかもしれません。転職を経験した薬剤師のブログを元に、転職の失敗談や成功に導いた方法などをピックアップしてみました。

薬剤師が転職したい、と考える時はどのような理由なのでしょうか。様々な理由がありますが、薬剤師の転職ブログに掲載されていた代表的な退職理由を挙げてみました。

人間関係

薬剤師の転職理由の中で「人間関係」を挙げる方は非常に多く、ブログ内でもよく見受けられました。

特に薬局勤務の方にこの理由を挙げる方が多く(閉鎖的な職場が多いので仕方ないかもしれません)具体的には

  • 「上司、同僚と馴染めない」
  • 「どうしても合わない人がいる」
  • 「パワハラやセクハラが横行している」
  • 「尊敬できる上司がいなかった」

などといった不満が挙げられます。中には「部下の管理に自信がないので」など、人間関係だけでも様々な転職理由があります。

給与アップ

給与を上げたくて転職したいという方も多く、

  • 「拘束時間(夜勤のある職場や少ない人数で運営している薬局など)が長い割に給与が高くない」
  • 「年齢の割には給与が高くない(薬剤師は新卒で勤務するのは24歳からですし、大学に費やした学費を考慮するとこのように考えるのも納得ができます)」
  • 「同窓生と比較して給与が安いのでびっくり(調剤薬局の給与体系や人事制度は多種多様なので給与金額に差がつくのも当然です)」

というコメントがありました。

スキルアップできない

薬剤師はスキルを磨かないと成長しませんが、限られた環境で業務に就いている方はスキルアップやキャリアアップを実現することが難しく、自己成長のため転職をしたい、という方がいます。

例えば

  • 同じ業務ばかりで変化がなく、将来的に新しい業務に取り組むこともなさそうだ
  • メンバーが固定されていてポジションも詰まっている、出世が望めない
  • 研修制度がないのでスキルアップが難しい

とブログで嘆いている方々です。

薬剤師の転職失敗例とその理由

次に薬剤師の転職失敗例を様々なブログ内からピックアップしてみました。実際の経験されたお話なので参考になります。

転職情報が不足し思うような活動ができなかった

限られた状況や情報しかない中で転職活動を行い、転職活動が上手く進まない、転職後に後悔する、という方がいました。

具体的には選考の対策をどうすればいいのか分からない(自己応募だけで転職活動を行っている方に多い)、転職後により良い条件の案件を知り後悔する、という方です。

入職前と入職後の話が違う

転職後、「選考の時に聞いていた給与と入職後の給与が違う!」「残業代が出ると聞いていたのに出なかった」「聞いていた仕事内容と全然違う」と感じる方がいました。

口頭で聞いていた給与や環境が入職してみると違っていた、という失敗例です。仕事内容や待遇は口頭だけではなく書面で確認しましょう。

転職エージェントに振り回された

転職活動の有効手段である転職エージェントですが、「希望とは違う職場への転職を強引にすすめられた」、「迷っている段階なので早期の転職を強要された」という話がありました。

なぜこのようなことが起こるかというと、転職エージェントは営利目的で運営されており、コンサルタントは目標数字を達成をしなければいけないからです。コンサルタントからこのような進め方をされた場合は、相手に流されることなくはっきりと意思表示をしてください。

薬剤師が転職を成功させるために行ったこと

では、転職に成功した薬剤師のブログから、成功した要因をピックアップしました。

複数のエージェントに登録する

転職エージェントを利用して転職活動を行っている薬剤師は多いのですが、転職に成功している方のほとんどは複数のエージェントに登録して活動を行っていました。

複数の転職エージェントに登録することによって、

  • 「選考の機会が増えた」
  • 「エージェントも得手不得手があるため上手く情報の取捨選択をしていた」
  • 「相性の合うコンサルタントと会うことができた(コンサルタントとの相性は転職を成功させる大きな要因です)」

というメリットがあるようです。

前向きな気持ちで取り組む

転職に成功した薬剤師のブログを拝見すると、共通しているのは「前向きな気持ちで転職活動に取り組んでいること」です。転職活動では選考が上手くいかないこともあります。選考が見送りになると落ち込んだりネガティブな感情を持つこともありますが、前向きな方は「なぜダメだったのか」を分析したり、応募可能な案件探しに気持ちを切り替えるのです。

進まなかった選考でも上手く次の機会に活かし成功に導いていました。

情報に敏感

情報に敏感になれば希望の案件をいち早くキャッチできます。そのために幅広い情報網を持ち、まめにチェックしなければいけません。転職サイトからの情報収集、転職エージェントへの登録、ハローワークからの情報収集など、幅広い情報源を持つことが転職の成功につながります。

余裕を持って活動する

転職に成功した方の中には、転職したい!と決意してから希望時期を設定し計画が立ててから活動を行う、という方がいました。このように余裕を持って転職活動を取り組み事は成功するための大きなポイントの一つです。

余裕を持って活動に取り組むと、希望に沿わない案件に焦って転職する、ということがなくなります。同様の理由で、退職せず、就業しながら転職活動を行うのも重要なポイントです。

きちんと確認をする

いくら前向きに考えている案件の選考が進んでも、選考の最終段階、もしくは内定の段階では納得のいくまで確認し、懸念点を解消することは転職を成功させるために必要です。

例えば、待遇面や仕事内容は書面で確認すること、職場のスタッフの人員や環境を確認する、職場見学をする、などです。

ママ薬剤師の転職活動と最強の働き方

薬剤師として働いている女性の中には子育てと仕事の両立を図るため、無理のない条件で働ける職場への転職を考えている方が少なくありません。薬剤師としてのスキルを活かしながら今までよりゆるく働くためにはどうしたら良いか、見ていきましょう。

どんな働き方をするか事前に決めておく

転職活動に入る前にまず決めておきたいのが「どの程度働くか」という点です。両親のバックアップや旦那さんのサポートが得られるのであれば、比較的長い時間働くことができるでしょう。逆に、母親が主体となって子育てを行う場合にはパートや派遣を中心に就職先を探すことになります。

何曜日なら働けるか?何時間働けるか?というように具体的な計画を立てる事で、希望条件に合う転職先を見つけやすくなります。夫婦だけで自由に過ごしていた時と異なり、子育てをしながら働くためには譲れない条件があるものです。自身の体力や子供と過ごす時間といった複数の要素を考慮した上で、現実的な働き方をすることが大切です。

産後に時短勤務をするための条件

育児・介護休業法により、育児のための両立支援制度の一つとして「短時間勤務制度」、いわゆる時短制度の導入が義務化されています。

短時間勤務制度(所定労働時間の短縮措置)(法第23条)

「事業主は、3歳未満の子を養育する従業員について、従業員が希望すれば利用できる短時間勤務制度を設けなければなりません。」引用元:育児・介護休業法のあらまし.indd (mhlw.go.jp)

時短勤務をするためには子供が3歳未満であることの他に、「育児休業中でないこと」や「1日の所定労働時間が6時間以下でないこと」といった条件を満たしている必要があります。また、雇用期間が1年に満たない従業員は労使協定により適用除外となる場合があります。

こうした点を考慮すると、ママ薬剤師が転職すべきかどうかは慎重に考えた方が良いでしょう。現在の職場で育休制度を利用し、育休明けに時短勤務ができるならそれがベストかもしれません。時短勤務が難しい場合や、職場の雰囲気が合わない等の理由で転職するのであれば、パートタイムや派遣の形で働く事を検討できます。

子持ちのママ薬剤師に理解がある職場を選ぶ

働きながら子育てをする上でママ薬剤師が抱えがちなのが、「周囲に迷惑をかけてしまうのが申し訳ない」という悩みです。子供が熱を出してすぐに帰らなければならない等の突発的な事態が生じた時に、どうしても同僚の負担が増えてしまうからです。

そんな時、子育て経験のある同僚や今まさに子育てしながら働いている同僚がいる職場であれば、お互いにサポートしながら仕事を楽しむことができます。長く仕事を続ける上で、子育てと仕事の両立に理解がある職場を選ぶことは大切なポイントです。

薬剤師が利用した転職エージェント

薬剤師のブログから、評判の良かった転職エージェントとその特徴を紹介します。特徴など参考にしていただき登録していただきたいのですが、前述のように複数のエージェントに登録することをおすすめします。

マイナビ薬剤師

https://pharma.mynavi.jp/

薬剤師専門の転職エージェントでは、もっとも多数の案件を取り扱っているエージェントです。常に50000件以上の案件、しかも幅広い業界の案件があります。きっと希望に近い案件を見つけることが出来るでしょう。全国にネットワークに持っているため、地方にも強いという特徴があります。

リクナビ薬剤師

https://rikunabi-yakuzaishi.jp/

就職情報サービスの老舗、リクルートのグループ企業の転職エージェントです。リクナビ薬剤師も幅広く多数の案件を取り扱っていますが、特に企業からの案件が多い、という特徴があります。リクルートは人材紹介業でも老舗で転職に関する情報を豊富に有しています。手厚いサポートも特徴の一つです。

薬キャリ

https://pcareer.m3.com/

医療の情報提供サービスでは日本最大規模の企業、エムスリー株式会社のグループ会社が運営している転職エージェントです。医療従事者からの信頼が高い転職エージェントのため、調剤薬局、ドラッグストア、病院からの求人依頼が多く、多数の案件が揃っています。

また、多様な働き方の案件も多数あるため、正社員にこだわらず派遣や契約社員なども師やに入れて転職活動を行っている方におすすめです。

ファルマスタッフ

https://www.38-8931.com/

日本最大規模の調剤薬局チェーンを経営している日本調剤グループの転職エージェントです。薬剤師特化型での転職エージェントでは最大手であり、豊富な実績とノウハウを有しています。特に調剤薬局の案件が充実しています。

まとめ

「転職したい」と決意すればすぐに退職したいという気持ちは理解できます。しかも薬剤師は現在の転職市場では売り手市場で人気があるため応募可能な案件は多数あるので転職しようと思えばいつでも可能です。しかし転職するからには自身の希望に合致する職場に移らないと意味がありません。

時間はかかるかもしれませんが、理想の転職を実現するために、ここで紹介したプロセスをひとつひとつ慎重に進めながら活動を行ってください。